レーザー・光治療の変遷
「レーザー;LASER(=Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)」発想の誕生は、1916年にノーベル物理学者のアインシュタインによる誘導放出の研究が原点です。
1960年には米国の物理学者のメイマンがルビーの結晶を使い、光を強力に直線的に送り出すルビーレーザー装置を開発。1960年代にはゴールドマンが、世界で初めてルビーレーザーを使用して子供の皮膚血管腫の治療を行います。
■レーザー機器の誕生
1983年、米国ハーバード大学皮膚科ウェルマン皮膚研究所のアンダーソンらが「Selective Photothemolysis(選択的光熱融解理論)」を発表。レーザー光線の波長(Wavelength)、照射持続時間(Pulse dilation)、単位面積当たりの熱量(Fluence)の3つの要素を調整して照射することで、特定の色素、細胞を選んで融解する、もしくは機械的な力で組織を破壊することができるという理論が、その後の近代レーザー機器の発展に大きく寄与します。
〜あざやほくろを除去するレーザー(形成外科・皮膚科)から
肌の若返りを目的としたレーザー・光治療(美容皮膚科)の時代へ〜
レーザー光線の波長、パルス幅、出力によって、皮膚のメラニンやヘモグロビンなどの特定の色素物質を分解できることから、1980年代半ばから1990年代には形成外科・皮膚科領域において、あざやほくろを除去するためにメラニン吸収を主体にしたレーザーの技術革新が進みます。
主に使われた波長が694nmのルビーレーザーで、メラニン色素を多く含んだあざやほくろには最適な波長です。
さらに、パルス幅が短ければ短いほど組織選択性が高まるため、ミリ秒(1/1000秒)単位のロングパルスレーザー、マイクロ秒(1/1000000秒)単位のショートパルスレーザー、ナノ秒(1/1000000000秒)単位以下のQスイッチレーザーの開発も進みます。ナノ秒単位以下を総称したQスイッチレーザーには、694nmのQスイッチルビーレーザーを初め、755nmのQスイッチアレキサンドライトレーザー、1064nmのQスイッチNd-YAGレーザーがあります。
また、ほぼ同じ時期に波長が10600nmの炭酸ガス;CO2レーザーや2940nmのEr-YAGレーザーを使用した蒸散系レーザーによるフル・スキンリサーフェシング(皮膚表面を熱で均一に蒸散させて、肌を入れ替える)が欧米で流行りますが、ダウンタイム(日常生活への支障)が長引いてしまう性質があり、副作用として色素沈着も多く、日本人の肌には適応し難く馴染みませんでした。
ここまでの、肌に強い刺激(ダメージ)を与え、一旦かさぶたを作った後、肌を治そうという考えの侵襲的なアブレイティブ・レーザーに対し、1999年にオルスターが痛みや副作用がない、照射後からメークができる、かさぶたを作らない、普通の生活のまま肌に優しい肌の若返りが可能なノン・アブレイティブ・スキンリジュビネーション(非侵襲的皮膚若返り)を提唱。その後、レーザー・光の技術開発が進み、肌の若返り治療は一気に加速します。
あざやほくろなどの"点"を対象とした形成外科・皮膚科のレーザーメス的な考え方から、顔全体を"面"で捉えた肌の若返りをレーザー・光治療器で行う時代(美容皮膚科)に変化していきます。
■色彩的老化(シミ、くすみ)に対する光治療の開拓
色彩的老化(シミ、くすみ)の治療器として、2000年に登場した『フォトフェイシャル;IPL(=Intenced Pulsed Light)』は日本でも一世を風靡します。2002年には『オーロラ(現e-light)』が開発。
2006年には米国Cutera社より520-1100nmの幅広い波長を使用し、日本人の肌を念頭に置いて開発されたフォトブライト治療『ライムライト』が登場します。
また、同じ頃に500-635nmに限局した短めの波長を使用した、直径6.35mmのピンポイントのシミ光治療器『アキュチップ』も開発され、今まで『フォトフェイシャル』や『オーロラ(現e-light)』では取れなかったシミが非常に切れ味よく取れていき、ノン・アブレイティブ(非侵襲性)にも関らず肌質の改善が図られるという新しい分野が開拓されます。
■感触的老化(毛穴の開き、ニキビ、小じわ)に対する
スキンリジュビネーション(肌質の若返り)
スキンリジュビネーション(肌質の若返り)を目的に、1064nmのQスイッチNd-YAGレーザーを低い出力で顔全体に照射するノン・アブレイティブ(非侵襲性)のレーザー治療器として、2002年に『マックスピール』が開発。
2004年には米国Cutera社より痛みや副作用がなく、肌質の改善効果が徐々に確実に得られるレーザーピーリング『ジェネシス』が登場し、感触的老化(毛穴の開き、ニキビ、小じわ)に対して、現在でも非常に人気の高い治療法で定評があります。
〜レーザートーニングによる肝斑の新しい治療法〜
これまでレーザーで肝斑の治療は禁忌とされてきましたが、2005年前後からレーザーによる肝斑治療の有効性が認められ、肝斑にもレーザーが用いられる時代に突入していきます。
その肝斑への画期的な治療法として、2008年に米国HOYA ConBio社より「レーザートーニング」という新しい技術で非常に注目された『メドライトC6』が登場します。これは、1064nmのQスイッチNd-YAGレーザーを非常に低い出力で照射して比較的短期間に繰り返すことで、肝斑治療を効果的に安全で確実に行います。
レーザーで肝斑を治療するための注意点として、
- メラニン色素を破壊できるように、深達度の高い赤外線域の波長とナノ秒単位以下のパルス幅のレーザーを選択する。
- 均一にレーザーが照射されるビーム形が最も重要で、照射径内のエネルギーが均一なトップハット型のレーザーを選択する。
- メラニン色素のみを破壊し、周りの正常皮膚には影響を与えない(炎症を起こさせない)くらいの適切なスポット径と低出力を選択する。
あきらめていた肝斑、『メドライトC6』によるレーザートーニングで肝斑も肌質も改善する新レーザー治療です。
■形状的老化(しわ、たるみ)へのプロローグ
形状的老化(しわ、たるみ)に対して、2002年にラジオ波;RF(=Radio frequency)の電流を使用した治療器として『サーマクール』が登場し、しわやたるみの治療が可能になります。しかし、『サーマクール』の弱点として強い痛みとダウンタイムがあり、痛みを軽減すべく新しい治療器として、2003年に『ポラリス(現リファーム)』が開発。
2004年には米国Cutera社より「痛みのないサーマクール」として脚光を浴びた『タイタン』が登場します。1100-1800nmの近赤外線の光が真皮全層を加熱し、サーマクールと同等のたるみの改善効果が得られる唯一のたるみ光治療器です。特筆すべきは、ノン・アブレイティブ(非侵襲性)がゆえに痛みや副作用がなく、無理なく確実に若返りが図られます。
〜美肌・アンチエイジング治療の決定版!〜
ザ・クリニック名古屋では、2007年に国内初の最新美肌・アンチエイジング治療として「表皮から真皮までのプレミアム3Dトータルスキンケア」を開発しました。
ノン・アブレイティブ・スキンリジュビネーション(非侵襲的皮膚若返り)の代表格である『3Dトータルスキンケア』は、シミ・そばかす、くすみ、毛穴の開き、ニキビ・ニキビあと、小じわ、しわ、たるみなど女性が抱える複合的な肌の悩みを一気に改善することを目的にした集学的治療です。皮膚を構築する表皮、真皮上部、真皮の3層すべてをターゲットとし、各層ごとに「美白のライムライト」(表皮)、「キメ・透明感のジェネシス」(表皮〜真皮上層)、「肌の引き締めのタイタン」(真皮深層)を効率よく的確に、かつ定期的に照射して刺激を与えることで、低下した肌機能を活性化させていきます。
様々なスキントラブルを総合的に改善し、美肌や顔全体の若返りへとアプローチしていくための最高峰のスキン・リセットプログラムです。
2009年には米国Ulthera社より「切らないフェイスリフト」としてダウンタイムのない超音波による唯一の本格的リフテイング治療器『ウルセラシステム』が登場します。
フェイスリフト手術をすることなく、SMAS筋膜(たるみ治療において重要な組織)へ、メスを使わずに超音波の力だけで効率よく安全・確実にアプローチすることが可能で、強力なリフトアップを体感できる最強の超音波たるみリフティング治療です。
■スキンリサーフェシング(肌を入れ替える)という発想のレーザー
アブレイティブ・スキンリジュビネーション(侵襲的皮膚若返り)の中で代表的なスキンリサーフェシング(肌を入れ替える)は、1980年代半ばから欧米を中心に10600nmのCO2レーザーや2940nmのEr-YAGレーザーを使用した蒸散系レーザーによるフル・スキンリサーフェシング(皮膚表面を熱で"面"に蒸散させて削ることで、肌を入れ替える)として流行りますが、しかしながらその効果は素晴らしいものの、赤み、腫れ、色素沈着、湿疹、肥厚性瘢痕などの激しいダウンタイムや副作用が見られやすく、特に炎症性色素沈着などが起こりやすい日本人の肌には合わないと考えられ、ほとんど普及しませんでした。
■革新的なフラクショナル・レーザーの誕生
スキンリサーフェシングの効果はそのままに、痛みや副作用、ダウンタイムが少ない、日本人の肌にも生活スタイルにも受け入れられる「肌を入れ替える的美容医療」が待ち望まれる中、世界的に約20年間研究が続けられ、遂に2004年、ウェルマン皮膚研究所のアンダーソンらが「フラクショナル・テクノロジー(皮膚表面にレーザーを微小な"点状"に照射させて、肌を入れ替える)」という新しい技術を開発します。
革新的な「フラクショナル・テクノロジー」を搭載したフラクショナル・レーザー治療器として、2004年にフラクショナル・レーザーの元祖『フラクセル』が登場します。2005年にはCAPテクノロジーを駆使した『アファーム』、2006年には『モザイク』、2007年には『フラクセル2』が開発。
2008年には米国Cynosure社より通常の『アファーム』の1440nmの波長に加え、1320nmの波長をほぼ同時に連続して照射できる『アファーム マルチプレックス』という新機種が開発され、「肌の入れ替え」の能力に加えて、さらに「たるみの引き締め」のダブル・アクション効果が可能になります。
色彩的老化(シミ、くすみ)や形状的老化(しわ、たるみ)だけでなく、感触的老化(ニキビ跡、毛穴)に対して特に高い改善効果が期待される「フラクショナル・リサーフェシング(皮膚表面に微小な穴をランダムにあけ、肌を入れ替える)は、2008年以降もさらにフラクショナル・レーザー技術の開発が進みます。
■侵襲型のアブレイティブ・フラクショナル・レーザー機器の登場
2008年には『エコツー』や『アンコア』、『ピクセル』が開発。
2009年には米国Cutera社より2790nmの美容皮膚領域における新たなる波長レーザークリスタル=Er-YSGGレーザーを使用した『パール フラクショナル』が登場します。Er-YSGGレーザーの『パール フラクショナル』はバランスのとれた蒸散・凝固作用により、CO2レーザーの『エコツー』や『アンコア』、Er-YAGレーザーの『ピクセル』に比べ、最小のダウンタイムで最大のスキンリサーフェシング(肌を入れ替える)効果を導き出すことが可能で、ニキビ跡や毛穴治療において現在最強のフラクショナル・レーザーと呼ばれています。
フラクショナル・レーザーは、1500nm周辺の波長を使用したNd-YAGレーザー(1320nm/1440nm)の『アファーム マルチプレックス』、Er-Glassレーザー(1550nm)の『フラクセル2』、Er-YAGレーザー(1550nm)の『モザイク』などの熱凝固作用を利用した非侵襲型のノン・アブレイティブ・フラクショナル・レーザー機器(NAFLR)と、Er-YSGGレーザー(2790nm)の『パール フラクショナル』、CO2レーザー(10600nm)の『エコツー』や『アンコア』、Er-YAGレーザー(2940nm)の『ピクセル』などの熱蒸散作用を利用した侵襲型のアブレイティブ・フラクショナル・レーザー機器(AFLR)に大きく分類されます。
生体組織に熱量を加えると、皮膚のタンパク質は、
1.低熱量による熱刺激(加熱)→月単位の肌の入れ替え
2.中熱量による熱凝固(変性および損傷)→週単位の肌の入れ替え
3.高熱量による熱蒸散(破壊)→日単位の肌の入れ替え
といった反応が起こります。
これらのタンパク質の反応は、使用するレーザーの波長を変えることで上手く調整することが可能で、一つの波長だけではなく、複数の波長のフラクショナル・レーザーを組み合わせた「フラクショナル・レーザー・リサーフェシング(皮膚表面に波長の異なるレーザーを"点状"に照射させて、皮膚を蒸散・凝固・加熱して肌を入れ替える&再生する)」は、ニキビ跡や毛穴治療、肌の若返り(しわ、たるみ、くすみ)において画期的な治療法です。
〜ニキビ跡や毛穴治療、肌の若返り(しわ、たるみ、くすみ)において
画期的なフラクショナル・レーザー・リサーフェシングの治療法〜
ザ・クリニック名古屋では、2010年にNd-YAGレーザー(1320nm/1440nm)の『アファーム マルチプレックス』とEr-YSGGレーザー(2790nm)の『パール フラクショナル』を中部地区初導入。波長(皮膚深達度)の異なる二種のフラクショナル・レーザーの設定を細かく調整しながら、ダブルアプローチによる最新式の「フラクショナル・レーザー・リサーフェシング」を開発しました。
1回の治療で肌を20〜25%入れ替えることができ、表皮と真皮で同時に肌再生(皮膚の収縮とコラーゲンの増生)が促されることで、毛穴や深いニキビ跡、凸凹肌、しわやたるみ、くすみなど肌の若返りにも大変効果的です。
■肌を生まれたてのベビースキンに入れ替える、ワンランク上の真珠肌へ
遂に、痛みや副作用、ダウンタイムが少なく、日本人の肌に合った、程よくハード(確実な効果)で、程よくジェントル(高い安全性)な 「肌を生まれたてのベビースキンに入れ替える、ワンランク上の真珠肌」が現実になりました。